唇顎口蓋裂

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唇顎口蓋裂でお悩みの方へ

口蓋裂の治療について

1.口蓋裂とは

胎児の初期では口唇や口蓋は左右に離れています。胎児の4-10ヶ月でこれらが中央で融合し、生まれる時には口唇・口蓋がひとつになっていますが、まれに融合しないまま生まれる場合があります。発生率は口唇と口蓋を合わせて5-600人の新生児に一人と、比較的多い先天異常のひとつです。
癒合不全が口蓋の後方部のみにとどまる口蓋単独裂と、口唇や顎裂(歯槽堤の裂)を伴う唇顎口蓋裂とがあり、更に唇顎口蓋裂には片側のみの場合と両側の場合があります。この裂の状態によって、治療方法も異なります。

2.手術(口蓋形成術)の目的

口蓋形成術の目的は次のものです。

  1. 口蓋裂を閉鎖することにより、食物や飲み物が鼻に流れ込んでしまう状態をなくし、哺乳や摂食を容易にします。
  2. さらに重要なこととして、これから言葉を覚える赤ちゃんが、順調に正しい発音を覚えられるように口の中の環境を整える、という大きな目的があります。
  3. 口蓋裂の患者さんは中耳の換気をおこなう耳管の開閉機能に関与する筋肉に、走行異常があり、このために中耳炎を起こしやすくなっています。(口蓋裂のお子さんの約80%に中耳炎を合併しています)。口蓋裂の手術を受けると中耳炎の原因となっている筋肉の走行異常はある程度改善します。

3.手術の時期と大切な点

口蓋裂の手術時期と手術法は次の2点を考慮し決定します。

  • 1.手術の影響による上顎の発育障害をいかに回避するかという点
  • 2.言語の獲得に適した良好な機能・形態を何歳で得るかという点

赤ちゃんの言語獲得の時期は1歳半から2歳ごろですが、構音に重要な役割を持つ鼻咽腔閉鎖機能は、口蓋裂が無い場合ではもっと早い出生直後の時期から、自然に鍛えられていると考えられます。
早期に口蓋裂手術が行われ、軟口蓋の運動機能が早くから再建された赤ちゃんは、子音の獲得順序が口蓋裂児パターンでなく正常児パターンをとることや、構音獲得過程での異常構音の出現頻度が低いことなどのデータが、東海大学の患者さんを対象にした比較で出ています。


主な子音の初発出現時期

東海大学形成外科では、赤ちゃんに正常に言語機能を獲得してもらうことを重視し、出来るだけ早い時期の口蓋裂の閉鎖を目指しています。
しかし通常の手術法を用いて、ただ単に手術時年齢を早めることは、幼い患者さんの上顎発育に対する悪影響が大きいため行われません。
赤ちゃんの上顎にあたえる手術の悪影響を最小化するためには手術法の改良が必要ですが、なかでも大きな違いを生じるのは口蓋裂の裂幅です。
広い裂幅を閉鎖する場合は手術法の選択肢が限定され、当然、比較的侵襲の大きいとされる手術法を用いることになります。また同じ手術法であっても裂幅が狭ければ少ない切開・剥離の範囲で手術を終えられ、当然手術後の瘢痕も少なく、良好な顎発育が期待できます。
東海大学形成外科では98年から、顎裂や口蓋裂を狭小化し、よい位置関係にする術前顎矯正装置を使用し、手術前の顎や口蓋の矯正を行っています。この装置を手術前に赤ちゃんの口腔内に装着することにより、顎裂・口蓋裂が狭いものになり、早期の手術が可能になます。

東海大学形成外科では口蓋裂手術を、生後6ヶ月から1歳で行うことを目標にしています。現在行っている手術の手術時期は次のようなものです。

片側完全唇顎口蓋裂: 口蓋裂の閉鎖手術、口唇裂の閉鎖手術 →6ヶ月
両側完全唇顎口蓋裂: 顎裂の閉鎖手術と口唇の閉鎖手術→6ヶ月
口蓋裂の閉鎖手術 →12ヶ月
口蓋単独裂: 口蓋裂の閉鎖 →12ヶ月

4.手術方法

口蓋裂の治療には、いろいろな手術方法が過去にありましたが、現在広く支持されている方法は次の2種類です。

€ファーラー法(Furlow法)

口蓋の粘膜骨膜を剥離し、これを引っ張って中央に寄せることで裂を閉鎖します。
術後に粘膜・骨膜で覆われていない傷口がない点で優れています。
これにより手術後の赤ちゃんの上顎の発育は良好であるとされています。
言語機能の改善は良好で、Push Back法と同等の結果が得られています。
しかし裂幅の狭い症例でないとこの方法は適用できません。
現在、東海大学では口蓋裂の裂幅を狭くする術前矯正を行った上で、この方法を用いて早期手術を行っています。

プッシュバック法(Push Back法)

口蓋の粘膜と骨膜を一緒に剥離して中央に移動し、裂を閉鎖する方法です。
中央の裂がふさがる一方で、両側には粘膜・骨膜で被覆されない露出部分ができます。
原法ではこの部分はそのまま傷口としておき、自然治癒するのを待ちます。

伝統のある術式で、信頼性が高く、言語発達に対する治療効果も安定しているといわれています。但し顎発育に対する影響が大きく、術後に顎発育不全が出現することがあるとされています。
東海大学ではこの術式を用いる患者さんでは、 瘢痕の形成による顎発育の障害を少しでも防止するため、口腔内の露出した傷に人工皮膚の移植を行い、術後の瘢痕拘縮を少なくしています。

5.本法により起こりうる合併症・後遺症

全身麻酔に伴う合併症が起こり得ます。従って風邪気味の場合は麻酔に伴う合併症を防止するために手術を延期します。その他、比較的まれではありますが術後の腫れによる呼吸不全、誤嚥性肺炎等が起こることがありますます。また術後出血が多い可能性、及びこれにより輸血や再手術を必要とする可能性が考えられます。通常輸血の準備はしませんが、ごくまれに輸血が必要となる場合はこれを行います。

手術自体は口の中に限局したもので決して大手術ではありませんが、手術の部位が喉の奥であるため、術後の腫れや出血などが大きな危険につながりやすく、比較的危険度の高い手術です。すべての患者さんは原則として、術後1日間集中治療室(ICU)に入室して頂きます。